お礼には





ゲホッ、ゲホッ。

廊下を歩く私に聞こえているのは、
今向かおうとしている部屋からの咳だけだった。
いつもならそこら中から聞こえてくる隊士の声はない。

今日はあるお上の天人の警護の仕事がある日。
本当は私も行かなくてはならないのだけど・・・・・・

ガラッ

私は扉を開けた。

「大丈夫ですか?沖田隊長」
「大丈夫そうに見えやすかィ?」
「見えないから聞いたんです」

目の前には、濡れタオルを頭に乗せ、
顔を赤くした沖田隊長がいた。
そう、これが私が任務に行かずに屯所で留守番している理由。
どS王っ・・・沖田隊長が隊長を崩したのは昨日の夜。
皆で食事をしている時だった。
沖田隊長はそこで倒れた。
原因は高熱の風邪。
そしてその熱は朝になっても下がることがなく
任務に就くことは出来ず、寝ていることになったのだ。

皆無事に帰ってくるといんだけど。
前のガマガエルの時は局長怪我したからなぁ。
あ、でも今回のはかなり短いとか言ってたような言ってないような。

私は頭の上からタオルをとり絞りなおした。
沖田隊長はそれを目で追っている。

「絶対風邪引いたの、こないだの任務のせいですよ!!」
「こないだ?」
「・・・・忘れたんですか?」

沖田隊長は思い当たるものがないようできょとんとしている。

意外にこの人記憶力無いの?

「こないだ。雨の中の任務があって、びしょ濡れで帰ってきたじゃないですか」
「あぁー。あれかィ」

沖田隊長の声はかなりの棒読みだ。

絶対覚えてないぞこの人。

「でも、俺は原因あれじゃないと思いますけどねィ」
「え?あれじゃないんですか?」

沖田隊長は何かを思い出したように言った。

アレ以外何が原因だったんだろ?

すると沖田隊長はどこからか真っ黒な本を出し、ページをめくった。

「何ですかソレ?」
「ここ読んでくだせェ」

沖田隊長はその謎の本を私に差し出した。

えーっと

「失敗した場合。実行した者に何らかの影響が出る。
 しかし、コレは一生つくものではないため、諦めずにまた挑戦して欲しい。」

え、この本何?
私は気になって題名を確認した。

『本格黒魔術 〜叶えましょうその願い〜』

「・・・・・・・・」
「たぶん。それじゃないかと・・・・って何固まってんでィ」
「いやー、何ていうか。沖田隊長らしいというか」

私は開いていたページを閉じ沖田隊長に渡した。
しかし、沖田隊長はソレを受け取らなかった。

「挙げまさァ」
「いらないですよ。だって沖田隊長が失敗した本ですよ!?」
「大丈夫だー。お前ならできるぞー」
「あの、かなりの棒読みで言われても」

いや、確かにね。
少しは興味持ち始めてはいるんだけど・・・・・・
もちろん、沖田隊長の影響で!!


ゲホッ

また沖田隊長は咳をした。

結構辛そう。
私高熱の時ってホント嫌なんだよね。

そんな事を思いながら沖田隊長を見ていると
目が合ってしまった。
やっぱり、隊長はかなりの美形だ。
一瞬ドキッとしてしまった。

「あのぉー。沖田隊長。私顔とかになんか付いてます?」

無言なのは辛いので声をかけた。

「別に何も付いてやせんぜィ?」

それじゃぁ、何で沖田隊長は私を見たのだろう?
あ、もしかして私が見てるの気づいて?

「ただ、」
「ただ?」
「ただ、新たに土方を抹殺する方法を考えないとと思いましてねェ」
「・・・・・さすが」

自分の体調が悪いってのにそんな事を考えられるなんて
さすが、サドスティック星の王子。
しかし、私もどんな計画がいいか考え出した。

え?何で突っ込まないかって?
そりゃぁ・・・・・・・私もSだから?
前に沖田隊長に言われたんだよね。
あんま自覚ないけど。
それに土方暗殺計画を一緒にやってるし、

「今度は連携プレイで行きますか?」
「連携ですかィ。でも、前回もやりやせんでしたっけ?」
「大丈夫です。もうあれから1週間経ってます」

毎日毎日、やられてるんだから、1週間前のやり方は覚えていないと思う。

沖田隊長は連携の場合の計画を考えているのか、
「んー」といかにも考えている素振りをした。

「そいじゃ、俺がいつも通りに攻撃して、お前が背後から攻撃ってのでどうでィ」
「いんじゃないですか?」
「いんじゃないですか?じゃねぇーぞコノヤロー」
「「!?」」

私が意見に同意すると背後から第3者が現れていた。
しかも、まさに噂をすればの状況。
真選組副長 土方 十四郎だ。

「あれ?いつから居たんですかィ?・・・・影薄すぎまさァ」
「ほんと、気づかなかったぁー・・・・意外に薄かったりしますよね」
「よォーし、お前ら刀を抜け」

副長は額に怒りマークを出しながら、刀に手をそえた。

「副長。病人相手に何言ってんですか?」
「そうですぜィ。俺は病人でさァ。」
「お前は病人じゃねぇーだろうが、それに総悟も。もうピンピンしてんじゃねェーか」

副長はそう言うと腰を下ろした。

「ってか護衛、早く終わったんですね」
「あぁ。相手がすぐに出てきてくれたからな」
「へぇー。あ、怪我は?誰もしてませんか?」
「大丈夫だ。今回は誰も怪我なんかしちゃいねぇ」

良かった。

私は「ふぅー」と息を吐いた。
すると副長が煙草を取り出すのが見えた。

「だから、副長。ここ病人いるんですって」
「あぁ?」
「いや、だから煙草は止めてくださいよ」
「しゃーねぇ。外で吸うか」

そう言いながら副長は部屋を出ていった。

「土方のヤロー、いったい何しに来たんでィ」
「たぶん、沖田隊長のお見舞いですよ」
「は?」

私は副長がさっきまで座っていた所を指さした。
そこには、大江戸ストアとプリントされたビニール袋が。
中を見るとプリンやヨーグルトなど病人でも食べやすいものが入っている。

「沖田隊長何か食べますかー?」

両手に食べ物を持ちながら私は言った。

「んじゃ、こいつを」

沖田隊長は左手にあったものを取った。

軽くお腹空いたなぁ。
これ、私も食べちゃだめかな?

沖田隊長はもごもごと食べながら言った。

「コレ、喰い終わったら、礼の変わりにさっきの計画をやってやりましょうかねィ?」

ごくんと口に残っていたものを飲み込むと沖田隊長はニヤリと笑った。
それにつられて私も笑う。

待っててくださいよ副長。
私たちからのお見舞いのお礼を。



【コメント】
4141を踏んでくださった彼雨様のリクエストより作らせてもらいました。
リクエストに沿って作ったつもりですが・・・・大丈夫だったでしょうか?
判断は彼雨様に任せようと思います。

キリリク本当にありがとうございました。

尚、彼雨様のみお持ち帰りをおkとさせてもらいます。

20090131